サウンドデザインを極める:サウンド、サンプル、ドラムのレイヤリング方法
- Loopcloud Japan
- 3 時間前
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2025年8月25日
意図のないサンプルの組み合わせではなく、複数のサンプルを重ねて効果的に機能させるには、隠れた技術が存在します。
アリストテレスが「全体はその構成要素の総和以上である」と語ったとき、彼はサウンドデザインやビートメイキングについて予言していたのかもしれません。 彼がAbleton LiveやSerum 2を2400年前に予見していたのか、それとも物事の本質を見抜く普遍的な原理を発見していたのかはわかりませんが、この言葉は音楽制作において非常に当てはまります。
サウンドを正しくレイヤリングする技術を学ぶことで、この古代の知恵をより深く理解できるようになります。 スネアはその典型的な例です、選んだサンプルに十分な「クラック感(アタック)」があっても、「ボディ(胴鳴り)」が不足していることがあります。 完璧なサンプルが見つからない場合、2つのサンプルを組み合わせてユニークなハイブリッドスネアを作るという手法があります。 ただし、うまくいくとは限りません。
2つのサウンドを重ねて効果的に機能させるには、運に頼るか、本物のスキルが必要で、サンプルをパズルのように組み合わせるためには、明確な原則があります。 この記事では、そのテクニックを詳しく解説し、サウンドのレイヤリングを上達させ、よりユニークな音楽を作る手助けをします。
サイコアコースティックによるサウンドデザイン
この記事の多くは、「サイコアコースティクス(心理音響学)」の技術に基づいています。
私たちがどのように音を知覚するかに関する科学であり、音の錯覚や認識の仕組みを研究することで、聴覚の働きを明らかにしています。
サウンドをレイヤリングする際に役立つ原則は、「知覚的融合(Perceptual Fusion)」という心理音響学の原理に基づいており、2つの音がどのようにして私たちの脳内で1つの音として認識されるかを説明するものです。

部屋に座っていて、同時に2つの音が鳴ったことはありませんか? 例えば、エアコンがついた瞬間に外で車がエンジンをかけるとき、もしそれらが完全にシンクしていたら、私たちは新しい音が生まれたように錯覚し、脳が「これは何だ?」と判断を迫られます。 一方で、2つの音が融合せず別々の出来事として認識されることもあります。
サイコアコースティックスは、この両方の現象を説明し、音楽制作に応用できるのです。
レイヤーを成功させるためのタイミング
前述の例で重要なのは「発音タイミング(onset time)」です。これを音楽制作に応用してみましょう。
Loopcloudには数百万のサウンドがあります。ここではESTの「Fourward Drum & Bass」のスネア・レイヤーと…

…Niche Audioの「Tropical House Sessions」の高域でクラップ的かつリバーブの効いたサウンドを組み合わせてみます。
DAWで拡大して見てみると、2つのサウンドは微妙にずれて鳴っているのが分かります。
もし低域の音の冒頭を削り、両方のサウンドを同じ瞬間に揃えれば、理論上は融合して聞こえるはずです。

ズレが小さければ改善は分かりづらいですが、冒頭が整っていないサンプルや立ち上がりに時間がかかるサンプルでは、この調整が効果的で、両方のクラックが完全に同時に鳴るようにすることで、知覚的に1つの音として融合しやすくなります。

オフセットとサウンドの長さ
短いヒット音の場合、エンディングを揃える必要は必ずしもありませんが、「1つの音」に聞かせたいなら、揃える方が効果的です。 特にリバーブの長いサウンドでは、その尾をカットすることで余計な「別の音」として認識されるのを防げます。
チューニングで一体感を作る
次に、ベルの音をタムの音に合わせてチューニングしてみましょう。 一見不自然な組み合わせですが、心理音響学的なレイヤーの原理を示すのに最適です。
同じ音源から出る音は倍音が揃う傾向にあり、それを模倣するために片方のサンプルをリチューニングします。
ここで使うのは、Dub Pack Series Vol.10 - Jamminのデジタルシンセ・タムと、RV Samplepacksの「Vintage Beats & Breaks」に収録されたクリーンでテープ感のあるベル音です。

まずは両方のオンセットとオフセットを揃えます。

次にベルの音をDAWのチューニング機能で調整します。 タムの音程は曖昧ですが、耳を頼りに合わせていくのがポイントです。

パンニングと定位
サイコアコースティックスでは、2つの音が同じ方向から聞こえると1つに融合しやすいとされています。 音楽制作では「パンニング」がその役割を担います。
例えば2つのスネアをレイヤーする場合、両方がセンターに配置されるのが一般的ですが、ミックス内で競合するパート同士はパンニングで分離させると、聴き取りやすさが向上します。
モジュレーションを共有させる
2つの音が同じように変化(モジュレーション)すると、私たちはそれを「1つのもの」として知覚します。 例えば自動車が通り過ぎるとき、エンジン音やタイヤ音はすべて同じ動きで変化するため、私たちはそれを「車」として認識します。
制作においては、同じLFOをかける必要はありません。 むしろ「エンベロープ」に注目すべきで、音がどのように立ち上がり、減衰し、持続し、消えていくのか。この形を揃えることで、異なる音でも一体感が生まれます。

上の画像では、2つのサウンドが同じようにレベルが上昇するように設定されています。
下側の(オレンジの)ベルのサウンドは、以前は高いところから低いところへと変化していましたが、現在はよりゆっくりと上昇するようになっています。
もし2つのサウンドをより一体感のあるレイヤーとして重ねたい場合、タム(緑色)のサウンドを同じようにうねるようにモジュレーションすることです。
より良く聴くこと
これらのレイヤリング技術は理論に基づき、実践的にも効果的です。 しかし最終的に判断するのは「自分の耳」です。
どのサンプルを組み合わせるかが最も重要な要素であり、それが成功を左右します。 ただし今回紹介したテクニックを身につけることで、行き詰まったときの解決策になり、また耳を鍛えて「何が合うか・合わないか」を見極めやすくなります。 結果として、サンプル選びがより的確になり、制作の効率と完成度が向上するでしょう。
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