グラミー賞受賞のプロデューサー、作曲家アンソニー・マーキース・リードが、彼の音楽世界をユニークに紹介します。
Anthony Markeith Reid(アントマン・ワンダー)は、フィラデルフィア出身で、ロサンゼルスを拠点に活動し、グラミー賞を受賞したプロデューサー、ミュージシャン、作曲家です。その多彩なキャリアの中で、ReidはDj Premier、Justice League、Just Blazeなどのプロデューサーと仕事をし、Kanye West、Anderson .Paak and Action Bronsonのトラックで制作の信用を得て、さらに多くのプロジェクトのために音楽を制作してきました。
今回、ReidはLoopmastersからデビューサンプルパック「Sketches」をリリースしました。様々なジャンルと時代からインスピレーションを受けたReidは、あらゆるジャンルのアーティストに影響を与えるようなサンプルパックを作りました。
生演奏のインストルメントをレコーディングし、テクスチャーや自然音を取り入れたSketchesは、ユニークなサウンドの宝庫と言えるでしょう。
Reidにインタビューを行い、彼の新しいパックの裏側、音楽制作とサンプリングに対する異端的なアプローチ、そして音楽業界でプロデューサーとしてやっていくためのアドバイスを伺いました。
新しいサンプルパック「Sketches」に期待することは何ですか?
人によってはソウルやクラシックのようなジャンルから影響を受けたりするけれど、Sketchesは、私がその時々に感じていた様々な感情、様々な影響に焦点を当てた音楽を作り出しただけなんだ。
斬新なアイデアであればあるほど、通常サンプリングされるような場所からは生まれないんだから、色々なことに挑戦するんだ。
それを見た他の人たちも色々なことに挑戦するようになればいいなと思っています。
サウンド的にはほとんどメロディックな感じだね。
このパックはホーンやキーボード、シンセ、テクスチャーがたくさんあるんだ。
ただ、そういうものを作っている時の自分の状態にもよるんだけど、その時はジャズやちょっとした ストリート系が多かったかな。
異例なことですが、ジャンルの間を行き来したり、探求したりすることが多いのでしょうか?
ええ、じっとしていられないんです。
私はADHD(注意欠如・多動症)なんですが、それが音楽にも表れていますね。
曲の途中で突然ジャンルを変えることもありますし、そういうことが好きなんです。
今、私たちは何百万時間という音楽を消費していますが、もし私がこの環境に貢献するのであれば、音楽を聴くときに心地よさを求めるのではなく、何かを感じてほしいと思っています。
ただ座ってリラックスしたり、雰囲気を味わったりする音楽は他にもたくさんあります。
私はそれも作らないというわけではありませんが、私がインスピレーションを受けるのは、思いがけないサウンドです。
例えば、ある曲では愛について歌ったかと思うと、ラッパーがやってきて2、3発撃ち込み、そして、たすぐに愛について歌うようになる。
R&Bとヒップホップがダブるような私音楽で育って、それをやっているだけです。
このパックを制作する際、ワークフローはどのようなものだったのでしょうか?
トラック制作と同じように、スケッチやアイデアを書きます。
通常音楽を聴いてからすぐに何かを作るということはあまりしないんです。
普段は、その日の気分でいろいろな音を取り込んでます。
テレビを見てるかもしれないし、どこかに行った時かもしれない。
CMが流れていて、それを聞いてピンときたものを、全部ひっくるめてアイディアにします。
多くの場合、ただ座って、何かが起こるまでひたすら作業を続けて、5、6種類のメロディが入ったセッションが出来上がると、その中から一番心に響くものを選ぶんだ。
制作時に使用している機材は?
僕はとてもシンプルなんだ。
88鍵のヤマハのキーボード、Ableton Push 2、MaschineとあらゆるDAWを持っています。
1つのものにこだわることはなく、その時々に使いたいと思ったものを使ってます。 時にはReasonを開くかもしれないし、Logicを開くかもしれない。
私の最も高価なハードウェアは、おそらくインターフェースで、それは大したものではありません。
使いもしないものをたくさん持っているなんて信じられないし、シンプルでありたいんです。
もし大きなものを使う必要があれば、他の人のスタジオに行って借りればいいだけです。 生楽器もたくさんレコーディングしています。
バイオリン、ホーン、もちろんギター、ベースもあります。
生のテイクが収録されると、ワークフローはどのようになるのでしょうか?
まず、最近やったものを切り刻むか、切り刻むために特別なものを作っておき、そのサンプルを使って、何か新しいものを作ります。
私はいつもサンプルを曲のいろいろな部分からカットするのが好きなんだ。
そうした素材をループさせるのが好きな人もいるし、それはそれでいいんだけど、素材をブリッジで繋げて使うのが好きなんだ。
その際にベースラインがつながっていれば、あるいはベースラインをつなげることができればいいと思っています。
それがサンプルの生命線だと思うんだ。
たとえ2つのものが一致しなくても、ベースラインに違和感がなければそれでいいんだ。
フルトラックで作曲してからリサンプリングするのですか?
作曲するときでも、まずイントロを作ってからにします。
イントロが自分のテンションを上げてくれて、がっかりさせないような感じがいいんだ。
ビートで十分だったり、ループで十分だったりすると、イントロが必要ないこともある。
聴いた瞬間に素晴らしいメロディだとわかったり、とてもキャッチーだったりする曲もいいけど、その上に素晴らしいイントロがあるのがベストだと思います。
音楽業界がプロデューサーにとっていかに不公平であるかということを、あなたは過去に語っています。
若いプロデューサーに、自分を守るためのアドバイスがあれば教えてください。
何よりもまず弁護士を雇うこと。
どのレーベルとも関係がない弁護士を雇い、すべてを明らかにした上で、レーベルがあなたにアプローチしていることを確認してください。
多くの人は、何が起こるかわからないと、あなたを説得したがります。
しかし、出来る限り今後何が起こるかを正確に知る必要があります。
これはあなた自信が やらなければいけないことです。
あなたが努力することによって、他のビジネスと同じように、あなたはそれに対して報酬を 得ることができます。
もし、 一時的な報酬を得られなかったとしても、後で十分な報酬を得るように、 きちんと契約をした方がした方がいいと思います。
今、僕の名前がクレジットに載らないという事態が起きているんだ。
僕がプロデュースした曲が映画に使われているんだけど、そこに僕の名前がないんだ。
これは、自分が対処しなければならない問題なんだ。
ビジネスに関しては、特に若いうちは、完全に契約などを理解しているわけではないのだから、他人に任せず、自分で弁護士に相談し話を聞くことが大事だと思う。
この業界では地位を利用して何でも手に入れる人が多いが、仕事に関しては地位は度外視してほうがいい。
人は、物事を成し遂げるために、地位を利用するのだと思います。
私は、努力と才能を使うべきだと思います。
もし、誰かがあなたの才能を求めてやってくるなら、その才能に見合った報酬を貰えばいいのです。
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